住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

トップページ > 住職法話 > 第78回(U. 緩和ケア医療に学ぶ生と死 -生と死の考察- 82〜87)

第78回

(平成29年9月1日)
U. 緩和ケア医療に学ぶ生と死

 前回のこの項では、これまでの流れを一時中断して、2016年10月22日開催された「東北緩和ケア研究会」で私が発表した「いかに生きいかに死ぬか 〜緩和ケア医療に学ぶ 生活に生かす仏教〜」の一回目を掲載しました。今回はその二回目です。

U-82. 生活に生かす仏教 @ 〜年回忌法要時に〜


圓應寺観音(最上観音霊場第四番)

 寺院では一年を通して、一周忌、三回忌、七回忌…等々の年回忌法要を営みます。特に土曜日と日曜日に集中し、一時間おきに3回ということも珍しいことではありません。そんな中私は、法要の前に10〜15分の法話を必ず行うようにしています。総基本テーマ「いかに生きいかに死ぬか」の下、毎年このテーマに迫る切り口を変えて話をさせていただきます。ロウソクに火をともし、棒線香を立て、焼香用の炭火の用意が出来たところでスクリーンにパワーポイントを使って絵、写真、文字を映し出しながら法話を続けます。以下は定年退職した平成16年以降の年毎のテーマ(切り口)です。

  • ◆16年  「少子・高齢社会をいかに生きるか〜医療と福祉の視点から」
  • ◆17年  「少子・高齢時代をいかに生きるか」その2
  • ◆18年  「故人に学び、自分を見つめ直す法要」
  • ◆19年  「有限の人生を意識して」@
  • ◆20年  「有限の人生を意識して」A
  • ◆21年  「有限の人生を意識して」B
  • ◆22年  「有限の人生を意識して」C
  • ◆23年  「有限の人生を意識して」D
  • ◆24年  「有限の人生を意識して 〜大震災からの教訓〜」E
  • ◆25年  「有限の人生を意識して 〜大震災からの教訓〜 」F
  • ◆26年  「人生80年を生きる」
  • ◆27年  「今を生きる 〜時は金なり〜」
  • ◆28年  「仏教のもう一つの柱『仏のような人間にする』から命を考える」
  • ◆29年  「終活 〜特に延命治療について〜」

U-83. 生活に生かす仏教 A 〜檀家総会時に〜

 当寺では年一回の檀家総会という場があります。それに併せ特別法話と講演会を行っています。住職の法話の後、元の病院勤務の「人的財産」を生かし、ドクターを中心とした方々にその道の専門的立場からの「いかに生きいかに死ぬか」を語っていただいています。直近の住職法話のタイトルは、次の通りです。

  • ◆平成24年 「『いのち』‥を考える 〜『いのち』とは‥? そして仏教〜」
  • ◆平成25年 「原発事故と『足を知る‥‥!』」
  • ◆平成26年 「生 き る」そして「死」を考える
  • ◆平成27年 「限られた人生を大切に生きよう」
  • ◆平成28年 「いのち その質を考える」

 以上の法要時法話を通して、今日一日を大切に生きること、明日の命が保障されている命はないこと。故人がいかに生きたか、遺族がいかそれを支えたかを語り、亡き人に想いを馳せることに。

U-84. 生活に生かす仏教 B 〜「大切に生きる」とは〜


圓應寺本堂内部

 では、前項で述べた「大切に生きる」とはどういうことでしょうか。日常生活の中でも良くこの言葉を耳にしますが、仏教的にこの言葉の意味を考えてみます。「大切に生きる」こととは、大乗仏教(2500年の仏教歴史の中で、インド〜中国〜朝鮮半島〜日本に渡ってきた仏教。対してインドシナ半島方向に渡った仏教を「上座部仏教」と言います)の教えの根幹である「自利利他行」に学び実践することではないか考えています。それでは「自利利他行」とはどういうことでしょうか。それは自己の利を追求する「自利」と共に他の多くの人にも利を得さそうとする「利他」も追求すること。その両方を追求実践することなのです。実践課題として「六波羅蜜」が必要と説きます。具体的には次の6項目となります。

  • ◆布施       恵みをほどこすこと
  • ◆持戒       戒めを守っていく
  • ◆忍辱(ニンニク) 怒り苦難に対する忍耐
  • ◆精進       努力
  • ◆禅定       精神統一
  • ◆智慧       人としての賢さ

U-85. 生活に生かす仏教 C 〜布施行〜


最上三十三観音石像

 前項の6項目を代表して「布施行」につて述べることにします。布施行には

  • @「財施(ざいせ)」 ― 施し
  • A「法施(ほうせ)」 ― 仏の教え
  • B「無畏施(むいせ)」 ― 無財の七施

 の三種類があります。その中で私は三番目の「無財の七施」が最も重要と考えています。「無財の七施 とは、誰にでもできる善い行いを指し、具体的には次の七項目を意味します。

  • @ 眼 施(げんせ) ― 優しいまなざしで接する
  • A 和顔施(わがんせ) ― 穏やかな表情で接する
  • B 言辞施(ごんじせ) ― 思いやりのある言葉を
  • C 身 施(しんせ) ― 自分の身体を使って奉仕
  • D 心 施(しんせ) ― 思いやりの心を持つ
  • E 床座施(しょうざせ) ― 席を譲る
  • F 房舎施(ぼうしゃせ) ― 自宅に人を迎える

 繰り返しになりますが、この布施行はお金が乏しくとも誰にでも出来る布施行なのです。私の個人的な思いですが、現代社会にあってはこの項目に「傾聴施」(良く聴く)を追加して、「無財の八施」にしてもいいのかな?とも思っています。

U-86. 生活に生かす仏教 D 〜歴代名僧の言葉  〜


桜散る境内

 歴代名僧の言葉には、現代に伝えられている多くのものがありますが、ここでは二つだけ紹介します。その一つは我が真言宗の開祖・ 弘法大師の言葉です。
 「それ仏法 遙かにあらず 心中にしてすなわち近し 迷悟 我に在れば すなわち発心すれば すなわち至る」という教えです。「仏様、悟りというのはどこか遠いところにあるのではない、私たちの心そのもの、一番近いところにあるのです。但し、その心の中には仏心と共に迷いも同居しているのです。仏心に気付きそれを実践することこそ大切な生き方なのです。」ということでしょうか。

U-87. 生活に生かす仏教 E 〜歴代名僧の言葉  〜

 二つめは、曹洞宗開祖・道元禅師の弟子との問答での教えです。以下の問答をご覧頂き、「人生に限りがあるからこそ今日を大切に!」を実践していきたいものです。

  • 弟子「人は何故成功する人と しない人がいるのですか」
  • 道元「成功する人は努力するからだ」
  • 弟子「努力する人としない人がいるのは何故ですか」
  • 道元「努力する人は志があるからだ」
  • 弟子「なぜ志がある人と無い人が生ずるのですか」
  • 道元「志のある人は、『人間は必ず死ぬ』ということを知っているからだ。志の無い人は、人間は必ず死ぬということを本当の意味で知らない。その差だ」と。

 この項の次回は、「東北緩和ケア研究会」発表の三回目(最終回)について述べます。

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